「小麦アレルギーになっちゃたの?

でも心配することないわよ、すぐ治るから。

人生も長い間には、体質が変わることがあるのよ。

でも薬を飲むと厄介なことになるから、飲まない方がいいわネ、

経験者は語るよ」




これは私の人生の大先輩であり、当店のブランデーケーキのお得意様

でもある鎌倉のマダムから言われた言葉だ。

彼女自身、子供の頃から身体が弱く、過敏症でアレルギー疾患が

あったので、食べ物には随分と苦労なさったようだ。


「季節の変わり目やその時の気分で、うけつける食べ物が限られて

くるけどお宅のブランデーケーキだけはいつでもどんな時でも大丈夫

なのよ。不思議なご縁ね、ありがたいわ」と喜んでくださる。

そのお気持ちと彼女がご自分の人生経験から得たお話しがとても

魅力的なので、私は月に一度ケーキをお届けした時におしゃべりするの

を楽しみにしている。


「去年の夏カゼで随分ひどい目にあったわ。おたくのケーキ以外何も

食べられなくなっちゃたから、体力がガクッと落ちちゃったのよ。

だから病院の先生から即刻入院なんて言われちゃうし・・・

でもお断りしてよかった、だって入院してごらんなさい、上げ膳据え膳

で病院の寝たきり老人みたいになっちゃうから」


ちなみにマダムは84歳であるが。

昨日お逢いした時はとても元気なご様子だった。

しかし、ご本人は2〜3日前から俳句に精を出し過ぎて、自律神経が

ちょっと疲れ気味だとおっしゃっていた。

自律神経はやっかいな神経で、ちょっとでも疲れるとおへそ曲げちゃう

から休ませてあげなくちゃいけないのよ、とも言ってらした。

ここらへんの感性がさすがだといつも感心させられる。


「あなたの自律神経も休息が必要よ。“休息”とは休んで息を吹き返す

と書くでしょ。息を吹き返す為には休みが必要なのよ
」と

くぎをさされ、ごもっともだと大きくうなずいてみせた。


帰り際に、今日はいつもより地味な装いだと思ったので、そんな話しを

したら「俳句のような年寄りじみたことをする時は、そのような格好を

した方がいい作品ができるのよ」と言う。

「病気の時に病人のような格好をしてると、病気が治らないのと同じよ。

早く元気になりたかったらドレスアップしなくちゃ」

あぁ、私も84歳になった時にはこのような生き方をしたいと決心して

マダムと別れた。